① 1990年に1歳児464名を対象に「行動的抑制傾向(新奇な場面や初めて出会う人に対して臆する傾向における気質)」と「気質的扱いにくさ(difficult children)」に焦点を絞り,それらの気質的個人差が母親の心理面(分離不安・育児ストレス)や行動(しつけ方略)に影響を与えること,子ども自身の社会化過程(対人場面で「自己」を制御し他者と協力的な関係を構築する適性を獲得する過程)で重要な要因として作用することを明らかにしてきた。
② ヒトのゲノムが一人ひとりわずかに異なっていることやエピジェネティクスにより遺伝子発現のメカニズムが徐々に明らかになり,私たち一人ひとりの外見や行動の違いが発達行動遺伝学によって説明されることが多くなってきた。また,情動反応を起こした時・知的活動を行っている時の脳機能における個人差が,非侵襲的方法によって記録ができるようになり,わたしたちの「個性」が脳科学の用語で説明されることも多くなってきた。こうした発達行動遺伝学・脳科学の研究成果を取り入れて気質の生理的基盤に関する知見が更新され,気質的個人差の安定性・変容性をもたらすメカニズムについて示唆が得られるようになった。そこで,そうした隣接領域の知見を取り入れて,生理的基盤が明らかになってきている情動反応性・情動制御性に関する気質に焦点を絞った発達研究を進めている。